外注に丸投げしない”共創型”の発信支援とは
2025年11月12日
外注に丸投げしない”共創型”の発信支援とは
「我々に発信支援を外注してくれたら、全てやります。任せてください」
こんな提案をする制作会社や広告代理店は多いです。
一見、経営者にとっては魅力的に聞こえるかもしれません。
「全部やってもらえるなら、楽だ」
と思うのも、自然です。
ですが、BtoB企業の発信支援において、「丸投げ型」は、実は最も失敗しやすい形態なのです。
なぜか。
理由は シンプルです。
発信の中身を一番よく知っているのは、その企業の営業や現場の社員だから。
外部の会社が「推測」で作ったコンテンツより、内部の人が「実体験」で話したコンテンツの方が、圧倒的に説得力があります。
広告代理店に「予算が小さすぎる」と断られた企業だからこそ、気づけることがあります。
それは、**「外部に丸投げするのではなく、自社チームと一緒に作る『共創型』が、最も効果が高い」**ということなのです。
今回は、その”共創型”の発信支援とは、具体的に何なのか、について掘り下げていきます。
1. 「丸投げ型」がなぜ失敗するのか
まず、丸投げ型の落とし穴を見ておきましょう。
落とし穴①:社内情報が外部に伝わりきらない
「うちの業界では、こういう顧客課題がよくある」
「営業では、こういう反論をよく受ける」
「実は、ウチの強みはここにある」
こうした社内で当たり前のことが、外部には伝わりません。
外部の制作会社は、ホームページを見たり、数回の打ち合わせから「推測」で企業を理解します。
その推測から作られたコンテンツは、往々にして「一般的すぎる」「説得力がない」になってしまうのです。
落とし穴②:更新が止まってしまう
外部に丸投げすると、「制作は外部任せ」という心理が生まれます。
「コンテンツ制作は会社に任せたから、うちが出来ることは…何もない」
こうした心理状態では、社内の「コンテンツ提供」の感覚が生まれません。
更新の時期が来ても、「あ、そういえば来月予定だった」という他人事のような感覚になるのです。
その結果、担当者が変わったり、予算がなくなると、ぱったり止まってしまいます。
落とし穴③:社内の学習が起きない
外部が全てやってくれる環境では、社内チームが「発信戦略」について学ぶ機会が失われます。
「ブログ記事はこういう構成で、こういう角度で書くと、顧客に響く」
「SNS投稿は、こういう心理で人は反応する」
こうした発信の理論や実践を、社内で学ぶ機会がないのです。
その結果、「何か発信したい」と思っても、やり方が分からない。
外部が抜けると、全く回らなくなる、という悪循環に陥るのです。
2. 「共創型」とは:企業とパートナーが一緒に作る
では、共創型とは何か。
それは、**「社内チームが『主体』となり、外部パートナーが『支援』する形態」**です。
具体的には、こんな流れです:
ステップ1:社内から「情報」を吸い上げる
- 営業から「顧客課題」を聞き出す
- 現場から「実装事例」を聞き出す
- 経営陣から「企業の方向性」を聞き出す
ステップ2:その情報を整理して「コンテンツテーマ」に変える
- 複数の顧客課題から、共通パターンを見つける
- それが「ブログのテーマ」になる
ステップ3:外部パートナーが「執筆」する
- 社内から聞き出した情報を、パートナーが記事に落とし込む
- 社内がレビュー、修正を指示する
ステップ4:社内が「企画」と「ディレクション」の経験を積む
- 「なぜ、この角度でこの記事を書いたのか」をパートナーから学ぶ
- 「もっと、こういう視点で書いてほしい」という修正ができるようになる
つまり、外部は「実務作業」を担当し、社内は「企画とディレクション」を担当するわけです。
3. 共創型の利点①:社内が「発信戦略を理解」する
共創型の大きな利点の一つが、社内チームが「発信のやり方」を学べるということです。
「こういう顧客課題を、こういう構成で、こういう例を使って説明すると、顧客に響く」
こうした発信の理論と実践を、パートナーとのやり取りの中で、自然と学んでいきます。
6ヶ月、1年と続けていくと、社内チームの「発信センス」が磨かれていくのです。
その結果、**「パートナーがいなくても、ある程度のコンテンツなら自分たちで作れる」**という状態に進化していきます。
これは、非常に大きな資産です。
なぜなら、将来、予算が変わったり、パートナーが変わったりしても、社内に「発信の力」が残るから。
4. 共創型の利点②:「本当に顧客に響くコンテンツ」ができる
丸投げ型では、外部の「推測」でコンテンツが作られます。
対して、共創型では、社内の「実体験」がコンテンツに組み込まれます。
営業から聞いた「ここを工夫したら、顧客が喜んだ」という話。
現場から聞いた「こういう課題を、こう解決した」という実装事例。
経営陣から聞いた「業界のこういうトレンドに対応したい」という方針。
こうした「生の情報」が、コンテンツに組み込まれると、説得力が全く違います。
顧客も、「あ、これは実体験から出ている情報だな」と感じ取ります。
その信頼が、ブランド認知や営業効率の向上につながるのです。
5. 共創型の利点③:「継続性」が保証される
丸投げ型では、「コンテンツ制作は外部任せ」という心理から、社内の当事者意識が生まれません。
対して、共創型では、社内チームが「企画」「ディレクション」「レビュー」に関わるため、自分たちの施策という認識が生まれます。
「うちが一緒に作ったコンテンツだから、続けたい」
この心理が、継続性を生み出すのです。
実際、共創型で発信支援を受けている企業は、丸投げ型の企業より、継続率が圧倒的に高いのです。
6. 共創型の実際の進め方
では、共創型は、実際にどう進めるのか。
一つのモデルをお示しします:
月1回の定例会(1時間):
- 前月の実績報告(アクセス数、SNS反応など)
- 今月のコンテンツテーマ決定
- 各テーマに対する「ディレクション」
営業・現場からの情報吸い上げ(週単位):
- 営業から「今週、顧客から聞かれた質問」をヒアリング
- 現場から「最近の工夫」をヒアリング
- これらを共有スプレッドシートに集約
外部パートナーによる執筆(2週間単位):
- 社内から集めた情報を、ブログ記事に執筆
- SNS投稿素材を作成
社内レビュー(1週間):
- 執筆原稿をレビュー
- 「ここはこう修正してほしい」「この例をもっと具体的に」という指示を出す
公開・発信(随時):
- 修正が完了した原稿を公開
- SNS投稿スケジュールに従い、発信
このサイクルの中で、社内チームが、徐々に「発信のやり方」を学んでいくわけです。
7. 共創型で必要な「社内側の心構え」
共創型をうまく機能させるには、社内側にも心構えが必要です。
心構え①:「情報提供者」になる覚悟
社内チームの役割は、単に「レビュアー」ではなく、「情報提供者」です。
営業から顧客課題を吸い上げ、現場から事例を吸い上げ、それをパートナーに提供する。
この「吸い上げる」という能動的な行動が、共創型を成立させるのです。
心構え②:「パートナーとの対話を楽しむ」
「なぜ、この構成で書いたのか」「どうして、この例を使ったのか」
パートナーに質問し、対話する。
その対話の中で、発信の理論と実践が、自然と学べるのです。
心構え③:「長期的な関係を前提とする」
共創型は、「この1ヶ月で完成」というものではなく、3ヶ月、6ヶ月、1年かけて、社内の発信力を高めていくものです。
短期的な成果より、長期的に「社内の発信力を高める」ことを目指すという心構えが大切です。
8. 「丸投げ」から「共創」へのシフト
広告代理店に「予算が小さすぎる」と断られた企業だからこそ、共創型という選択肢が見えます。
なぜなら、予算がないから「外部のクリエイターだけでは完結しない」という制約があるから。
その制約を逆転させると、「社内と一緒に作る」という、むしろ最も効果的な方法が、必然的に選ばれるわけです。
つまり、予算の制限は、「欠点」ではなく、「最適な方法を選ぶきっかけ」になるのです。
【まとめ】
共創型で、社内の「発信力」を資産化する
「発信を続けたいけど、外部に全部任せるのも不安だし、全部自分たちでやるのも無理」
そういう企業にこそ、共創型がぴったり合致します。
社内チームが「主体」となり、外部パートナーが「支援」する。
その関係の中で、社内の「発信力」が、徐々に資産化されていくのです。
3年後、5年後には、「自分たちで、かなりの発信ができるようになった」という企業に成長していきます。
「外注と社内、どのバランスで発信支援を受けたらいいか分からない」という方へ。 まずは現状を整理して、「共創型」の発信支援モデルを一緒に設計しませんか?