“広報担当が一人しかいない”会社でも続けられる発信体制の作り方
2025年11月11日
“広報担当が一人しかいない”会社でも続けられる発信体制の作り方
「うちは広報担当が私一人なんです。だから、SNS発信や動画制作はとても無理で…」
このセリフを、何度聞いたでしょう。
特に、小規模企業の経営者や単独で広報を担当している方から、この相談が絶えません。
そして、外部の広告代理店に相談したら、「こんなに人手がないと、対応できませんね」と言われてしまった。
そういった経験を持つ企業も、多いのです。
ですが、ここに大きな誤解があります。
「発信体制」=「専任の広報チーム」ではないのです。
むしろ、広報担当が一人だからこそ、工夫できることがたくさんあります。
実際、一人の広報で「月1本のブログ+週2のSNS+月1本の動画」を継続している企業は多いのです。
その秘訣は、「一人でやる」のではなく、「全社で分散させる」という発想転換なのです。
今回は、限られた人手の中で、どう発信体制を作るのか、その具体的な方法をお伝えします。
1. “広報一人”という認識こそが、生産性を下げている
まず、根本的な誤解を解きましょう。
多くの企業では、「SNS発信=広報担当の仕事」という認識があります。
「ブログ記事を書く=広報が全て企画・執筆・編集する」
「採用動画を撮る=広報が企画から撮影、編集まで全て行う」
こうした認識では、確かに一人では回りません。
でも、発想を変えると、こうなります。
「営業から現場情報を吸い上げて、記者になるのは広報。記者が聞きだした内容を、ライターが記事にする」
「採用動画は、営業や現場スタッフが喋る。広報はそれを整理して、編集者に指示を出す」
つまり、**「広報の仕事は『取材と企画とディレクション』で、執筆や撮影、編集は外部や他部門と分担する」**という発想です。
この転換が起きると、広報一人でも回り始めるのです。
2. 「営業」「現場」「経営陣」から、コンテンツを抽出する仕組み
では、具体的にどうするか。
まず必要なのは、社内から自動的にコンテンツが出てくる仕組みを作ることです。
仕組み①:営業から「顧客課題」を定期的に吸い上げる
営業は毎日、顧客と接しています。
顧客が何に困っているのか、何を求めているのか。
それは、ブログ記事のネタの宝庫です。
週に一度、営業との定例会議で「今週、顧客から聞かれたことで面白かった質問は?」と聞く。
その情報から、ブログ記事のテーマが3個、4個と生まれます。
仕組み②:現場から「実装事例」を毎月一つ、聞き出す
製造現場、施工現場、営業現場。
「今月、こんな工夫をしたら効率が上がった」
「こんな課題に直面したけど、こう解決した」
そうした小さな工夫や経験が、採用動画や事例紹介のネタになります。
月に一度、現場リーダーと座談会をして、「最近、印象的なプロジェクトはあったか」と聞く。
仕症③:経営陣から「決算期の重点施策」を聞き出す
経営陣は、会社の方向性を一番よく知っています。
「今年は採用を強化したい」
「新製品ローンチが控えている」
「業界のこういうトレンドに対応したい」
そうした方針から、SNS投稿のテーマやキャンペーン企画が生まれます。
3. 「ライター」「編集者」「撮影者」を外部パートナー化する
次に必要なのは、実務作業を外部にアウトソースする仕組みです。
広報担当者の実際の仕事は:
- 営業や現場から情報を吸い上げる(取材)
- その情報をどう発信するか、企画する
- ライターに「このネタで、こういう角度の記事を頼む」と指示する(ディレクション)
- ライターが上げてきた原稿をチェック、修正を指示する
- 編集者に「この記事を、こういう画像と一緒にレイアウトして」と指示する
- SNS投稿のタイミングと内容を決める
一方、外部パートナーの仕事は:
- ライター:指定されたテーマで、記事を執筆する
- 撮影者:社員に撮影方法をレクチャーしながら、一緒に撮る
- 編集者:原稿と画像を組み合わせて、記事をレイアウトする
- 動画編集者:撮影素材から、動画に編集する
この分離が明確だと、広報一人でも回るのです。
実際、月に15~20時間の外部ライター費用(15万~20万円程度)で、月2本のブログ記事を継続している企業は多いのです。
4. 「誰が何をするか」を見える化する
重要なのは、責任と分担を明確にすることです。
例えば、こんなテーブルを作ります:
| 業務 | 担当者 | 頻度 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 営業からのネタ吸い上げ | 広報 | 週1回 | 30分 |
| 現場取材 | 広報+現場リーダー | 月1回 | 1時間 |
| ブログ記事の企画・指示 | 広報 | 月2回 | 1時間 |
| ブログ記事の執筆 | 外部ライター | 月2回 | ライター側で対応 |
| 採用動画の撮影指示 | 広報 | 月1回 | 1.5時間 |
| 採用動画の撮影 | 広報+社員+外部撮影者 | 月1回 | 3時間 |
| 動画編集 | 外部編集者 | 月1回 | 編集者側で対応 |
| SNS投稿の企画・実施 | 広報 | 週3回 | 15分 |
見える化することで、「広報は、実はこれだけの時間で回せるんだ」という認識が、組織全体に生まれます。
そして、必要な外部費用も明確になります。
5. 「広告代理店に断られた」ことは、むしろ有利
ここで、視点を変えてみましょう。
広告代理店に断られた企業が持っている、実は大きなアドバンテージがあります。
それは、「自社でやるしかない」という必然性です。
必然性がある企業ほど、実は成果が出やすいのです。
なぜなら:
- 自社内で試行錯誤する文化が生まれる
- 営業現場の声が直接施策に反映される
- 小さなPDCAサイクルが回りやすい
- 社員全体の当事者意識が高まる
大手の広告代理店に任せている企業より、実は自社でやっている企業の方が、長期的には競争力が高いことが多いのです。
「予算がないから自分たちでやるしかない」→「それが実は、一番効果的な方法だった」
この転換に気づく企業が、2~3年後には大きな差がついています。
6. 「外注に丸投げしない」という原則を守る
ここで重要な原則があります。
「外注に丸投げしない、けれど全て自分でもしない」
つまり、広報の仕事は「企画とディレクション」に集中する、ということです。
多くの企業が失敗するのは、以下のどちらかです:
❌ パターン1:全て自分でやろうとして、燃え尽きる
❌ パターン2:全て外注に丸投げして、品質が下がる
✅ 正解:広報が「何を伝えるか」を決めて、その実装を外部と分担する
この原則を守ることで、小さなチームでも大きな成果が出るのです。
7. 「一人では無理」から「一人だからこそ工夫できる」へ
最後に、マインドセットの転換についてお伝えしましょう。
「広報が一人だから、発信は無理」
この考え方を、こう変えてみてください。
「広報が一人だからこそ、全社を巻き込む工夫ができる」
「予算が限られているからこそ、シンプルで効果的な施策に絞られる」
「人手がないからこそ、本当に必要なコンテンツに集中できる」
制約があるからこそ、工夫が生まれます。
その工夫が、実は大企業の大規模チームより、効果的なことが多いのです。
8. 3ヶ月で体制を作り、6ヶ月で結果を出す
実際の進め方としては、以下のタイムラインをお勧めします:
月1~2:現状把握と仕組み設計
- 営業や現場からの情報吸い上げ方を設計
- 外部パートナー(ライター、撮影者、編集者)を選定
- 「誰が何をするか」テーブルを作成
月3~4:小さく試す
- ブログ記事1本、採用動画1本、SNS投稿を試験的に実施
- 反応を見て、改善点を洗い出す
月5~6:本格化
- 月2本のブログ、月1本の動画、週2~3のSNS投稿を定期化
- 社員からのコンテンツ提供も習慣化
月7~12:拡大とチューニング
- うまくいったコンテンツは、量を増やす
- 反応の悪かったコンテンツは、改善する
- 新しい施策にチャレンジする
【まとめ】
広報一人だからこそ、全社が動く
「うちは広報が一人だから…」という悩みは、実は大きなチャンスです。
なぜなら、その一人が、全社のコンテンツ戦略の中心になれるから。
営業、現場、経営陣から情報を吸い上げ、それを発信に変える。
その過程で、全社の「顧客視点」が磨かれます。
「こういう課題があるんだ」「こういう成功事例があるんだ」という気づきが、全組織に広がります。
それが、長期的には、会社全体の営業力向上につながるのです。
「うちは人手が限られているから、本当に必要な発信に集中したいけど、何から始めたらいいか分からない」という方へ。
まずは現状を整理して、発信体制を一緒に設計しませんか?